《グルーヴとリズムの小話集》第6話:内鳴りの音と、世界に渡る拍
音が鳴っているかどうか。 それは意外と、本人にはわからない。
頭の中でははっきりしている。 身体の中でも、確かに何かが動いている。 リズムは感じているし、満たされてもいる。
でも、ふと気づく。 空気が揺れていない。
自己完結しているときの音は、 鳴っていないわけじゃない。 ただ、まだ外に渡っていない。
それは、 ヘッドホンの中だけで鳴っている音。 剣道で言えば、踏み込む直前の静止。 ドラムで言えば、スティックが皮に触れる寸前。
「内鳴り」 そんな言葉がしっくりくる。
内鳴りの音は、とても繊細で、正直で、豊かだ。 だからこそ、大切に抱えたままにしてしまう。 壊したくないし、ズレたくないし、 何より「これでいいのか」を確かめたくなる。
けれど、音というものは不思議で、 返ってきて初めて、音になる。
空気を揺らし、
反射が生まれ、 予想外の響きが混ざったとき、 音は「出来事」になる。
自己完結は悪いことじゃない。 むしろ、深いグルーヴはそこから生まれる。 ただ、そこで止めてしまうと、 リズムは循環しない。
外に置く。 少しだけ、世界に渡す。
完成させる、というより、 拍を置く。
すると返ってくる。
思っていたよりも軽い音で。 思っていたよりも、ちゃんと自分の音で。
鳴ってから考えるのではなく、 置いてから聴く。
音は、 もう十分に鳴る準備ができている。 あとは、空気に手渡すだけ。
この絵は後でアクリル絵の具で調えます
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